「バカの壁」は、啓蒙的な本です。
簡単に言うと、世界の見え方が変わる類の本です。
優秀な点は、
・哲学者たちの思考を現代問題まで落とし込んで理解させようとしていること
・人間関係や実生活で使える考え方について書いていること
・安い自己啓発や小手先のスキルではなくて、メタ的な内容であること
つまり、本質をえぐっている内容なのに、一定の読解レベルがあればとても読みやすい実学だという点です。
内容についてシェアします。
まず、人と人とはわかりあえません。理由は、人間として生きているなら避けられない障壁があるからです。これを筆者は「バカの壁」と呼びます。
バカの壁は、
・人間の思い込みをはじめとした脳内の無意識での作用
・考えることへの諦め→一元論になる
・現代特有の社会問題
が挙げられます。かなりざっくりな説明なので、詳しくは必ず本を読んでください。この内容はズレています。
学びだと感じたのは次のようなことです。
・考えることをやめない
人生の意味を考えて考えて悩んだ末、ほとんどの人は諦めます。
僕もそうでしたし、共感できる人も多いんじゃないでしょうか。
理由は簡単で、そこに意味などはないという結論が最も楽だからです。
ただ、もう1つの解決策もあります。
自分の意味を絶対的な何かに頼るという方法です。
それは不安だからです、こわいからです。自分が何者なのか?なんのために生きているのか?それを絶対的な何かに頼るとき、その絶対的な何かは神になります。(ここでは絶対的な存在=神としてます)
そうすると次に何をするか?実は、絶対的な何かから外れるものを排除しようとします。認知的不協和を解消するためです。これによって、バカの壁の出来上がりです。時にその絶対的な何かはルールかもしれません、人かもしれません。それとも超人的な。つまり宗教上の神かもしれませんが、そういったものにすがりつくのは自分の弱さを露呈しているようなものだと、この本から読み取れます。
考えることをやめない、二項対立を無理やり解消するのではなく、その2つの間で揺れながら螺旋的に成長していくことが人間として大切なことだと再認識しました。
問いに対する答えは無数にあり、答えがない問いは無数にあります。
無理やり1つの答えで安心したがるバカな脳にあらがい、常にアンチテーゼをぶつけ続けるような思考回路が大事だということです。
僕も常に生きること、この世界のこと、自分自身のことについて考えることをやめないでおこうと思います。
ただ、逸脱すればいいということではなくて、様々な要素をぶつけ合った結果の上位の段階にある中庸です。難しいです。
・わかり合おうとしない
これまで述べたように、人と人とが分かり合えるわけないです。
理由は、たいていの人間がバカの壁にぶち当たっていることにすら気づけていないからです。
自分がバカの壁を認識したとしても、それ以外の人はできていない。そういう状況で自分にできることは、それぞれの人間の底を正確に理解した上で手を打つことです。
共通認識が多くなった現代において、人の行動というのは画一化していきます。
そこから逸脱する人もいれば、孤独を感じる人もいます。
それらを全て自分の中に飲み込んで、共同体の中で行動できる人以外は排除されるというのが簡単な図式です。
そういう簡単な図式を理解して、人がどう動いてどう考えるか?そして人間はどのような仕組みで生きているのか?そこまで考えて、自分が、そして関わる全員が幸福になるにはどうすれば良いかを考えて行動するということ。
人間や世界に関する深い理解と、常にそれらについて考えることをやめてしまわないことこそが、現代を生き抜くための考え方なのだなと、そう言ったことが読み取れる本でした。
業務レベルまで落とすと、質と量どちらを大切にするか?とか、その他いろいろな二項対立が出てきますね。僕は筆者のようなどちらかに割り切らない考え方に賛成です。