就職。
これからの人生を大きく左右する、人生の岐路の1つと言っていいでしょう。
就職に向けて、いろいろと活動してみたり、直前になって慌てて就活の準備をしたり(僕はこのパターンでした)、動き方は人それぞれあると思います。
ただ、ここでは個人としての動き方のコツなどは説明しません。
そうではなく、今の就活市場が抱えている
「とてつもなく大きな問題」
についてお話します。
ミクロな個人レベルではなく、マクロな市場そのものが抱える問題を理解することで、個人としてどう動いていくべきなのかが逆説的に見えてくるでしょう。
目次
まずは理論から。情報の非対称性による逆選択、という現象。
まずは問題を構造的に理解するために、理論の理解から入っていきます。
みなさんは「情報の非対称性」という言葉をご存知でしょうか?
これは経済学の言葉で
「商品の購買時、売り手は商品のことをよく知っているのに、
買い手は商品のことをよく知らない状態」
を指します。
つまり売り手はその商品が高品質なのか低品質なのかよくわかっているのに、買い手は商品についての情報を持たないので品質の判断が容易にできない状態のことですね。
「レモンの市場」理論の提案者であるジョージ・アカーロフによれば、情報の非対称性があると市場に大きな不利益をもたらす「ある現象」が発生します。
その現象が、「市場の逆選択」と呼ばれるものです。
この現象を理解するために、極めて単純化したモデルで説明しましょう。
海外では高品質な商品を「プラム」、低品質な商品を「レモン」と呼ぶので、この用語を用いて説明していきます。
ある市場に、レモンとプラムを販売している売り手が50%ずついるとしましょう。
買い手は売り手と同数ずつ存在しているとします。
買い手は売り手がレモンを売っているのか、プラムを売っているのかわかりません。
そのため、買い手にとって目の前の商品がプラムである確率は50%です。レモンも同じく50%。
売り手はレモンを30万円以上で売ろうと思っていて、買い手はレモンなら40万円までなら支払ってもいいかと思っています。
プラムなら70万円以上で売ろうと思っていて、買い手は80万円までなら支払ってもいいと考えています。
このとき、売り手がレモンとプラムを見分けられる(情報が対称である)場合、レモンの買い手と売り手、プラムの買い手と売り手がバランスし、全員が不利益なく取引が成立します。
しかしここに、情報の非対称性があるとどうなるでしょうか。
買い手にとっては、レモンかプラムか判断できない状況なので、とても80万円など出せません。
数学的期待値に法って、
およそ60万円{(40+80)÷2=60}なら出せる、
という判断になるはずです。
50%でレモン、50%でプラムですから。
どう考えても、プラムの売り手が望む金額のオファーなど来るはずがありません。
そうなると、プラムの売り手はどうするか。
市場から撤退し始めます。
そしてみるみる期待値はレモンの値段に近づいていき、プラムの売り手は完全に市場から姿を消します。
市場には最終的に低品質な商品だけが残り、このような市場をレモンの市場と呼びます。情報の非対称性が発生している市場では、プラム(高品質な商品)の売り手が市場から排除されて、レモンの市場が完成してしまうのです。
この現象はまるで市場が低品質な商品を選択したかのように見えるので、「市場の逆選択」と呼ばれています。
つまり、
情報の非対称性のある市場においては、
市場には低品質な商品ばかりが残ってしまうのです。
採用市場における、『逆選択』。
なぜ、冒頭で市場の逆選択の話をしたのか。
それは、採用市場においても市場の逆選択が起こっているのではないか、と思っているからです。
採用市場は、情報の非対称性が強く発生している市場です。
学生もあまり企業のことを知らないし、企業も学生のことを知りません。
その解決策として面接なりGDなりがあるわけですが、この程度で情報の非対称性は埋まりません。
「やらないよりだいぶマシ」なので、一応続いている仕組みではありますが、本質的に情報の非対称性を解決できていません。
この状況を踏まえた上で、企業サイドから採用を見てみましょう。
もし、目の前の学生はプラム(仕事での能力が高い)だと見分けられるとしましょう。
このとき、企業はその学生を採用したいわけですから、大量に面接するコストをかけるより、こんなオファーを出す方が効率がいいはずです。
「初任給で40万出すから、ウチで働かないか?」と。
ここは交渉次第でしょうけど、少なくともなんらかの追加コストを支払ってでも就職してもらおうとするはずです。
実際に、少数ではありますがこのような交渉は秘密裏にあるようです。
しかし、なぜこの交渉を採用(特に新卒)ではできないのか。
それは他でもなく、「情報の非対称性」があるからではないでしょうか。
面接したとはいえ、得ている情報はそう多くはないでしょう。
そんな不透明な状況で一般的な新卒の倍出す、なんてオファーはできない。
数学的期待値に法った、「初任給」という仕組みの中でしかオファーはできないんです。
本当にプラムなのかレモンなのかわからないですから。
つまり、
プラムの学生にとっては今の採用市場は割りに合わないオファーだらけなわけですね。
レモンだったとしても問題ない報酬で雇用されてしまうということです。
さらに悪いことに、学生側も企業をちゃんと知らないことによってイカツイ歪みが発生しています。
上記のように、採用市場の企業側のオファーは「レモンの市場」になっています。
このとき、学生としてはこう思うはずです。
「どうせこの程度のオファーなら、プラムの確率が高い企業へ行きたい」と。
ごく自然な発想です。
オファーが同程度であり、あまり企業の情報がないのであれば、なるべくプラムの確率が高いオファーを受けたいと思いますよね。
この「プラムの確率が高い企業」こそ、
誰でも聞いたことのある「大企業」なのです。
これが大企業病の正体でしょう。
決して、「大企業にしか行きたくない!」、なんて思っていないのです。
「どこの企業も詳しく知らないから、大企業の優先順位が最も高くなる」だけなのです。
このような背景で学生はとりあえず大企業へ大量に応募し、大企業に応募者が殺到する自体に陥っているのです。
ここまででも十分問題だらけなのですが、まだまだ問題は残っています・・・
企業・学生「お前レモンやったんかいいいいいいいい!!」
・・・はい。予想通りの問題が発生しました。
採用、あるいは就職した結果、その企業・学生は「自分にとって」、レモンであったことが採用・就職した後に判明してしまうという問題です。
これこそ社会問題にもなっている、就職におけるミスマッチの問題でしょう。
大企業としては、別にレモンである確率は織り込み済みなので、そこまで痛くはないのかもしれません。
問題なのは学生と、大企業以外の企業です。
学生はプラムだと期待して入ってきています(ここでのプラムが人によって定義が違うのも根深い問題の1つかもしれません)。
それがまさかのレモンだったとは・・・!
構造を捉えていればかなり確率の高い帰結なのですが、本人はよもやこんなことが起きるとは思っていません。
辞める判断ができるのであればまだしも、噛み合わないまま残ってしまうと企業・学生のお互いが不利益を生み続ける構図になってしまいます。
転職が難しいこと、企業側も解雇が制度上難しいことが問題をさらに悪化させています。
中小企業に至っては、市場がそもそもできないという問題が発生しています。
現在の採用媒体は、年収や規模の情報ばかりが並び、
「学生側が本当に知りたい情報」が載せられていません。
学生が知りたいのは「その企業で働く自分はどんな姿なのか」であって、年収などの表面情報ではありません。
そのため、媒体を使っても情報の非対称性は解決されません。
かといってその他に就活生にリーチする手段もなく、大企業に行けなかった学生やたまたま見てくれた学生がチラホラ来るだけで、もはや市場が生まれない状態なのです。
大企業があれだけの人数から選んでもお互いにミスマッチが起きるのですから、この数からお互いにマッチする人材を見つけるのは、宝くじに当たるぐらいの確率なのではないでしょうか。
中小企業は2020年までに、約400万社のうち100万社が廃業するリスクがあると試算されているようですが、その原因のほとんどは経営者引退に伴う人材不足です。
中小企業としても手を打ちたいところでしょうが、打ち手がまったくわからないというのが現状です。
学生は新卒としての就活は基本的に1度しか経験しないので、問題意識を持ちにくいとは思います。
しかし、我が身に降りかかる問題ですし、社会問題ともなってきているので、理解はしておいてほしいと思います。
1番の問題は、誰も得してないこと。
何よりも問題なのは、この市場において「誰も得をしていないこと」です。
強いて言うなら、採用媒体ぐらいでしょうか。
プレイヤーとしての学生、企業は苦汁を舐める形になってしまっています。
大企業は大量のオファーが来る反面、採用コストは高まる一方です。
本音として最も望ましいのは1人の募集に対して1人の最適解が現れることでしょうが、そうもいかないので母数を増やして選ぶしかありません。
学生にとってはとんでもない倍率で勝ち上がるしかなく、しかも勝ったところで年収のオファーは「レモンの市場」でしかありません。
個人の評価に基づいたオファーが理想でしょうが、その仕組みはないに等しい。
その上、その企業は働く上で自分に合っているかどうかはわからないので、ミスマッチが高確率で発生します。
大企業以外を選ぼうにも、結局は情報がないので同じ問題が発生してしまいます。
中小企業にとってはもはや「どうしたらええねん!」状態です。
中小企業は従業員1人1人がいくつかの役職をこなしていることが多く、採用だけに人員を割くのが難しい。
その中で学生へのPRを行うことはリソース的に難しい場合が多く、解決できない状態にあります。
そしてこれらの複雑な問題は、すべて「情報の非対称性」というたった1つの問題から発生しているのです。
この問題さえ解決する仕組みがあれば、学生と企業両方の利益を最大化できる採用市場ができるはずなのです。
最高にシンプルな解決策。「一回、働こう。」
そもそもここで非対称となっている情報とは、企業にとっては「その人が働くことで会社にとってどんな利益があるか」ということでしょうし、学生にとっては「この企業で働くと、自分にどんな利益があるか」ということでしょう。
そして企業にとって最もその関連スコアが高いものは学歴だったので、学歴社会なるものが存在します。
ただ学歴は相関性はある程度あっても、決定的なファクターにはなりません。
高学歴で有能な人でも会社によって活躍できたり、できなかったりするという話は非常によく聞きます。
学生にとっても、本当は年収が高いかどうかや有名かどうかという軸で判断などしたくはないはず。
それでも、働いたことがないから自分にも軸がないし、仕事に関して提供できる情報がそもそもない。
だったら、一回働いてみるのはどうでしょうか。
極めてシンプルな解決策です。
学生としては働きながら自分にできること、提供できる価値を見つけられるし、企業としては働いている学生を気に入ったらオファーを出せるし、働く人材として本当に見るべき指標も明らかになってくる。
そういう意味で長期インターンに参加することは、学生にとっては企業にアピールすべき「企業で働いて提供できる価値」を明確にする上で価値があります。
仕事で提供できる価値は、なかなかプライベートでは見つかりません。
長期インターンでまず「社会の中で働く自分の価値」を明確にすることは、非対称性を解決する1つのアプローチです。
しかし、それはあくまで個人レベルでのこと。
仕組みとして、社会的にこの問題を解決できるサービスはないだろうか。
結論、ないです。
だったら、作ろう。
こういうアプローチで進めているサービスが、GOuniteです。
GOuniteでは、学生が企業へ『留学』する。
GOuniteでは、学生は企業へ「留学」します。
学生は8日間という特定の期間内で、企業での仕事を体験し、学びに行くことができます。
その中で企業は学生を評価し、「仕事」という軸で学生に自身の情報を提供してくれます。
学生は8日間の体験を終えたら体験ブログという形で企業での体験を残し、それがどんどん続いていきます。
学生は様々な企業に留学しながら自身の仕事における「情報」を貯めることができ、企業には表面的な情報ではなく、学生たちの「体験」が残されていきます。
これがプラットフォームとして成立した時、学生は好きな企業へ留学をして自分がどれだけやれるのか、社会にどんな価値を残せるのかを試し、それを証明する手段を手に入れることができます。
企業は直接学生とタッチポイントを持ちながら、「学生の実体験」という、非対称になっている「働いたらどうなるか」に関する情報をどんどん提供していくことができます。
いまの新卒採用のようにイチかバチかの就職ではなく、しっかりと企業、そして自分についての情報を持って、就職をしてほしい。
そうすれば、あなたには適正なオファーが届き、自分にとってプラムである企業へと進むことができるでしょう。
企業も学生とのタッチポイントを持ち、しっかりマッチする人材を判断しながらオファーをすることができる。
それが社会全体へと広がった時、いまの社会に蔓延する閉塞感から解放されるのではないかと思います。
GOuniteを通じて、社会的に流れている将来に対する漠然とした不安を、少しずつ和らげていければと思っています。
もしよかったら、GOuniteの世界を覗きに来てください。
GOuniteに興味があるという方は、まずはユーザー登録からはじめてください。