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うわっ…日本の人材の流動性、低すぎ…?


繊研新聞のサイトで、「新入社員就社意識調査」という記事を見つけまして。

 

タイトルには『今の会社で続ける』3年連続減とありました。実際のアンケートを見ても、年々いまの会社で働き続けたいという意識が減り、そのうち転職したいと考える新入社員が多くなっています。労働時間の意識も、定時に帰りたい、週に2,3回までという回答が多くなっている。

 

これは、事実です。
この事実にポジティブもネガティブもない。

 

でも、未だにこういったデータを見ては、

 

・今の世代は残業を嫌う
・今時の若い人は仕事への意識が低い
・ワークライフバランス重視が増えた
・the ゆとり!

 

みたいなヘンな空気感が漂うことが多いので、少しやりきれない気持ちになります。この事実に対する解釈が、ネガティブに寄ってしまう。確かにネガティブな面もあるのはわかりますが、全体の構図としてはポジティブに僕は捉えています。そもそも、こういう傾向が高まっているのは、当然の帰結だと思うのです。

 

 

「就社」の前提条件はもう、崩れ去っている

そもそも「就社」が当たり前だったのは、「1度契約すれば、会社は従業員を一生守る」という前提があったからです。終身雇用ですね。それが始まったのは、高度経済成長期。高度経済成長期に、日本型経営の三種の神器とされた終身雇用制・年功序列賃金・労働組合という仕組みが発明されました。従業員は終身雇用や労組によって厳重に守られ、賃金は年々確実に上がっていく。この仕組みが成立していたのは、当時が日本のモノづくり国家としての最盛期であり、生産すればするほど工業製品が売れ、国内産業の需要も戦後生まれの人口の多い世代が労働者になる「人口ボーナス」によって増え続けていたからです。そのため、三種の神器による人的コストも、生まれ続ける需要とそれによる利益によってペイできていた、という社会的背景がありました。
・・・さあ、これを現代にも同じように適用できますか?

って話です。
この仕組みは実はかなり早い段階で成立しない状況にはなっていました。最好景気の時代を前提とした仕組みだったので。ただ、継続的に需要が発生し、いいモノを作れば売れる時代ならばなんとかなります。それこそ、こないだまでならなんとか大丈夫、って状態だったかもしれません。でも、首の皮一枚つながってた前提も、現代でプチっと切れてしまいました。
モノ余りの時代の到来です。
日本全体で需要を刈り尽くしちゃったので、「何でもあるから、何にもいーらない」みたいな状態になっちゃいました。需要が飽和しちゃったんですね。この状態だと、いいモノ作ればなんでも売れるってわけにはいかない。需要が読めなくなってしまったんですね。
需要の継続的発生、つまり経済の成長が前提にあった仕組みにあって、ついに成長しない経済になってきました。完全なる前提の崩壊です。こうなると企業だって就社の前提を守れるかわかんないでしょ。そんな時代になってるから、若者だってあれっ、ずっと会社いる理由なくね?ってなっても不思議じゃない。嘘じゃん、だって。就社したら守られるなんて。そもそも就社する理由なんて全然ない。

 

人材は、企業の「固定資産」じゃねーぞ!

就社の問題は、個人の問題に留まりません。日本の問題です。
多くの人材が就社してても経済が成長している時代だったらいいですよ。でも、現代に入って明らかに停滞してる。「1人の人間が、1つの企業を成長させるために働くモデル」では、「日本」という全体は成長しなくなってる。このモデルは「1つの企業」にとっては最適なモデルでも、「1人の人間」にとっては「ムダな時間がやたら増える」モデルでしょ。企業に所属していても常になにか生み出しているわけじゃないし、勤務時間外でもほんとは自分の時間使えるわけで。

 

今までは企業を経済の主体として、企業が成長するために人材を一生囲ってても経済は成長していたし、個人としても守られるなら悪くない。でも、それだと日本は成長できなくなった。人材を守れなくなった。それなのに、企業が人材を「固定資産」として保有するのはおかしい。日本としても、今までのモデルで成長できなくなったなら、ビジネスモデルをチェンジしなくちゃいけない。

 

企業主体から、「人」を主体にしたモデルへ。

人材は持ってる時間を1つの企業だけじゃなくて、いろんな企業やコミュニティに提供しながら、日本全体の成長のために時間を使うことになる。人材は企業の固定資産から、「日本の流動資産」となるべき時代が来たのではないでしょうか。

いまの日本は、人材の流動性が低すぎます。

 

日本の流動資産として、若者はどう動くべきか

就社意識が年々下がっていることをポジティブな現象として捉えたのは、人材の流動性を考えてのことです。新入社員のみなさん、間違ってないと思います。
いまは個人が需要を喚起する時代です。ブロガーだったり、ユーチューバーみたいなインフルエンサーはその先駆けでしょう。需要が生まれないと言いましたが、えげつないぐらい細かくなってるだけです。ミクロな需要の文脈を掴めば、活躍の場は結構いっぱいある。ミクロだからこそ、個人の方が強い。早い。そういう需要を喚起できる人材に、市場価値がちゃんと付く流れがきてますね。VALUとか、タイムバンクとか、インフルエンサーマーケティングなんてのも出てきてます。まだまだ市場としては未熟ですけど。それでもこれからこの方向へ向かっていくのは、ほぼ間違いないでしょう。

そんな時代がのそのそとやってきている今、若者たちはどう動いていけばいいのか。
先述のVALUやタイムバンク、インフルエンサーマーケティングなどで、個人に起きた変化は何なのか。変わったのは、「評価主体」です。いままでは企業が絶対的な評価主でした。企業が評価して、企業の中に評価が貯まり、報酬を受け取る。こういうモデルです。企業単体に評価が貯まってしまうので、個人も移動が難しかった。しかし今、評価は「社会」に貯まるようになってきている。SNSなどで社会のあらゆる場所に向けた発信が容易になり、オンラインでできることが劇的に増えて移動時間コストもすっごい減少。場所という制約条件がゆるゆるになった今、企業だけに評価主体を任せるのはヘンな話です。

 

もっともっと、いろんなところから評価を集めていく。そういう姿勢が、誰にでも必要な時代になってきます。会社に居ようとも、です。会社はもう僕らを守ってはくれませんよ。そんな状況で評価を得るためにできることは2つ。「発信」するか、「働く」かです。

 

「発信」とはブロガーやユーチューバー、インスタグラマーなどに代表されるように、「独自のフィルターを通した発信によって、人を動かす」ことです。ミクロな需要を掴んで、独自のコミュニティを築く人たちですね。発信に反応して動く人たちはフォロワーであり、フォロワーこそ評価の表出です。あ、「動く」人たちですからね。アプリのフォロワー数を追いかけるのは本質的じゃない。どこかで聞いたような言葉ではなく、ちゃんと自分のコトバで語れる人。そのコトバが刺さるところには需要が生まれます。経済が生まれます。自分のコトバを発信し続けることは、評価を集めるための1つの有効な手段です。

 

もう1つはやっぱり「働く」こと。まだまだ経済の主役は、企業です。しばらくは企業が評価主体として最も影響力が大きいのは避けられない。ただ、さすがにもう1つの企業だけに評価を貯める時代は終焉が見えています。今なにかと「副業」ないし「複業」が取り沙汰されています。2018年1月、厚生労働省は 副業・兼業の促進に関するガイドラインを作成し、副業・兼業を推進する旨を発表しました。国レベルで人材を流動資産として捉える動きが、ようやく出てきましたね。Newspicksでも特集組まれていますし、よく聞く話にはなってきました。副業・兼業とはつまり、「いろんな企業で評価を取りにいっていい」ってことです。青い鳥みたいに「あーでもない、こーでもない」と彷徨うのは違います。それ、もはや働いてないので無職です。無業。働いて結果出して、仕事を評価してくれる主体をたくさん持つってことです。

 

そのためには、もちろん経験が必要だし、結果を出すためのスキルだって必要。発信するにも独自の視点が必要なので、経験0では難しい。自由に動ける反面、自分の身は自分で守る時代になっていきます。怖がらせるつもりはないですが。ただ早めに動く必要はあるでしょうね。まだ気づいてない人、気づいてるけど動けてない人がそこそこ多い今は、市場としてはビックチャンス。独自の視点で発信したり、いろんな企業で働き、評価を集めるために必要な経験・スキルは、今のうちにこっそり集めていきましょう。

 

大学生の流動性も、高めたい。

若者、と言いました。ただ、大学生は様相が異なります。発信はいいんですが、「働く」に関して問題があります。問題とは、大学生は「企業に所属していない」ことです。つまり、評価主体がいない。インターンに行く学生も増えてますが、短期はただの企業説明会だし、なんか普段やりもしないプロジェクトらしきものをやらされる。全然リアルじゃない。長期は1つ1つがすっごい重たい。副業できないじゃん!いい長期インターンに巡り会うのも一苦労。ただの雑用だった、みたいなこともあるのに、やめるときの心理的にしんどい感じとか、応募するときの緊張みたいなものって、やっぱり何回も経験したくない。流動性が低い。もっと流動的に、学生が企業へ評価を集めに行ける仕組みがほしい。その仕組みを最近、創っています。

約1ヶ月に8日間という期間の中で、学生は普段の企業の日常の中へ入り込み、現場を体感します。もちろん延長を依頼してもOK。8日間を1セットとして、スケジュールに合わせながらいろんな企業で現場を体感することができる。そして、そこで得た評価を可視化する仕組みも考えています。学生は大学生活を送りながら、もう1つ、「社会」を学びつつ評価を集められる場所を持ってほしいのです。
もうすでにいろんな学生が、企業の中で社会人と共に、なにかを生み出そうとする経験をし始めています。


みんなそれぞれに経験を積み、長期インターンや、就職に臨んでいます。大学生だからといって、社会人になれないわけじゃない。大学生も同様に、大学の固定資産となってはいけません。学生の流動性も、日本のためにどんどん高めていかないと。

 

うわっ…日本の人材の流動性、低すぎ…?

 

いやいや、今日までです。日本はここから、生まれ変わります。

 

 

日本をちょっと、変えにいく。