弊社にはたくさんの大学生が社会・仕事を学びにインターンをしに来ます。
その中でよく聞くことの1つが、
Webマーケティングをやりたくて、インターンに来ました!
というものです。もちろん、心意気やよし!学んでいけばいい。が、さすがにやりたいというには、あまりにざっくりした理解度でやってくる学生があまりに多く感じます。マーケティングは、あくまで総称です。「数学」くらいの粒度です。中にいろんな公式や、単元がある。
まずはこのざっくりを、噛み砕きましょう。まずは「マーケティング」というカッコいい雰囲気に包まれた謎のふわふわしたものを、理解できる範囲に落としてきます。細かい公式や単元より先に、どういう存在なのかわかるメガネをかけましょう。
マーケティングを、簡単に言うと?
端的に言います。マーケティングとは、「何かが売れるために、めっちゃ考えること。」です。「売れる」には限りませんが。フォロワーを増やしたい。ティッシュを大量に配りたい。そのためにめっちゃ考えることも広義のマーケティングです。
・・・ちょっとがっかりしました?
カタカナで「マーケティング」と聞いた時より、なんかあんまり魅力的でなくなったかもしれません。でも、そんなもんです。ラベルに騙されてはいけません。本質を知った上でもやりたいことを見つけないと、時間が無駄になりかねない。ただ、マーケティングの奥は果てしなく深いですよ。
「めっちゃ考える」を分解すると、
- だれに?
- なにが?
- どんな価値を提供できるか?
の3つを考えることになります。
価値とは、変化です。
「結婚できない俺」から、「結婚し、幸せな俺」に変化すること、つまり、「今よりステキな俺のイメージ」を買うわけですね。モノを買ってるわけじゃない。この価値をほしい人は誰で、何を提供すればそういうイメージを持ってもらい、買ってもらえるのかめっちゃ考えるのがマーケティングです。順番に見ていきますね。
①だれに?
これをマーケティング用語でターゲティングと言いますが、これを決めるだけでも本屋に行けばものすごい量の文献があるくらい、ターゲティングだけでも奥深いです。まずは専門的な話は抜きにして、なるべく平易に話していきます。
イメージしやすいように、この記事のターゲティングで考えましょう。まず、僕はインターン生とよく関わるうちに、インターン生はよく社会をわからないまま来ていることを感じていました。そこに不安も感じてる。
でも、わざわざインターンという結構な労力を使って学びに来るということは、「社会に出たらわかるようなことを、簡単に学ぶ場所がないんじゃなかろうか」と考えました。これは大学生の「状況」を想像しています。「大学生を取り巻く環境=社会ではすぐに学べるような専門的な知識を理解する場所がない」と考えた、って感じです。
この場合、まずは特に大学2〜3回生にそういうことが多かったので、「2〜3回生で、まだ社会にちゃんと出たことがなく、容易に仕事の専門的な知識を深く理解できないという問題を持った大学生」をターゲットとすることに決める。これがターゲティングです。
僕の場合は直接会った結果見つけましたが、基本的にはネットやマスによるリサーチや、デプスインタビュー(1対1で深く掘り下げていくインタビュー形式)などを使って、なんらかの「悩み」を抱えている人と、その人たちを取り巻く環境を見つけていきます。ターゲットとその悩みを見つけたら、その悩みを解決するには、「なにを」提供すればいいのかを考えていきます。
<まとめ>
誰に、とは、ターゲティング。誰がどんな悩みを抱えているだろう?いま彼らはどんな状況だろうか。問題を抱えている人のことをめっちゃ考え、イメージし、その人たちを助ける「なにか」を提供しよう。
②なにが?
助けたい人が見つかったら、その人に、いま、何を提供すればいいのかを考えます。ターゲットが、
2〜3回生で、まだ社会にちゃんと出たことがなく、容易に仕事の専門的な知識を深く理解できないという問題を持った大学生
だとすれば、自分が用意できるモノの中で、何を使えば彼らを助けられるでしょうか?一番よく聞くインターンに来た理由が、「マーケティングを学びたくて来ました!」でした。ただ、これを本当にやりたいのかと聞いていくと、大体まだ「実は、ちょっと興味あるくらいです。あんま知らないです。」って感じなんですね。あんまよくわかってないんです。だったら、行く前にちゃんとマーケティングを知って、
「もう少し詳しく学びたいから、インターンに行こう。」
「思ってたのと違うし、別のこと学ぼう。」
となってくれたら、彼らにとって目的を少し明確にできること、あるいは時間を無駄にせず済むことで、価値がありそうです。この場合は「マーケティングを理解できるまで噛み砕き、伝えること」が、ここでいう「なにか」ですね。
溺れている人がいたら、浮き輪でまず溺れる危険性をなくして、そのまま船で助ければいいですよね。リアルで考えると明確なシチュエーションですが、対面してないとなぜかこのシチュエーションの人に薔薇を投げ込むようなマネをしてしまう人がたくさんいます。冗談抜きで。「薔薇はキレイだから、みんな欲しいに決まってる!」と言わんばかりに。
ターゲットが明確になっていたら、少なくとも薔薇を叩きつけるようなマネはしなくて済みます。シチュエーションを頭に浮かべ、その人たちが必要とするようなモノ・情報を提供することを考えるのです。
<まとめ>
何を、とは、ターゲットを助けるモノ・情報など。頭に浮かぶターゲットが、今どんなモノや情報を持てば、今の状況を脱し、より良い自分を手に入れられるか。間違っても溺れている人に薔薇を叩きつけるようなマネはしてはいけない。
③どんな価値?
提供するモノ・情報が、彼らにどんな変化を生み出せるのかをイメージします。人はモノやら情報そのものではなく、そのモノ・情報を持ち、変化した「将来の自分」を購入します。
この情報を見たら、マーケティングをちゃんと知った上で、「インターン先で、マーケティングを使って活躍していく自分」をイメージするかもしれない。あるいは逆に、「マーケティングという路線を変更して、別の道へ進んでいく自分」をイメージするかもしれない。どちらにしても、自分に合った道を進む自分をイメージできるなら、この情報には価値がありそうだと判断できます。
ここまでのイメージができたら、書いたり、作ったり、あるいは直接会ったりして、「なにか」を届け、価値を提供します。「溺れている状態から助かる」ということも、「孤独な状態からパートナーと共に生きられる」ことも、「社会を学べず将来がふわふわした状態から将来の一歩目がちょっと見える」ことも。
すべては今の自分より、少しでも良い未来が待っていそうな「予感」に対して時間、お金を支払うのが生活者です。自分が提供しようとしている「なにか」は、そういう未来を見せてあげられそうか?100%当てることは無理でも、少なくとも0%ではない状態を目指しましょう。0%を打たないことが、社会人に最低限必要なマインドです。
<まとめ>
ターゲットに対して提供する「なにか」は、どんなポジティブな変化を与えることができるだろうか。どんな良いイメージを与えられるだろうか。ここまで考えてその可能性が感じられるのなら、それはやる価値が十分にある。テキトーなことをやって、価値になる可能性0%を連発するダメ社会人にだけはならないようにしよう。
最後に
ここまでが、マーケティングの枠組みです。テクニックはすべて削ぎ落とし、中身だけを伝えています。ここまでで、気づきましたか?実は、こんなにめっちゃ考えましたが、まだ何も作ってはいないのです。「作る」という行動は、なにより時間、労力、そしてお金がかかります。これが価値のないものであれば、作るまでにかけた膨大な時間も、多大な労力も、莫大なお金も。すべてが無駄になります。恐ろしいことです。
この惨劇を避けるために、めっちゃ考え、「先に価値をつくる」ことこそが、マーケティングです。がむしゃらに何かを作って価値が生まれるのを待つのではなく、価値を先に用意し、そこに商品やプロダクトを作る。これがマーケティングという仕事のあり方です。
マーケティングだけに絞って言えば、作り手ではありません。価値を見つけるところまでが仕事です。見つけた価値に向かって、自分で何かを作ったり、チームで作ったり、あるいは会社を立ち上げて何かを作ります。どの状態でも、マーケティングによる価値づくりがすべてのスタートになります。まずはすべての基礎となるマーケティングを学ぶのか、作り手としての専門スキルを先に習得するのか。どちらも自由ですが、少なくともマーケティングを「スキル」として学ぼうとするのはやめましょう。マーケティングは、「考え方」であって、なんか特殊なもんではないのです。
<さいごのまとめ>
マーケティングとは、価値を先につくる仕事である。作って大失敗する前にめっちゃ考え、失敗の可能性を極力潰してからスタートするための「考え屋さん」である。考え屋さんに興味が湧いたなら、向いているのかもしれませんね。